親父の遺言は「バッカーノ!を見ろ」だった

俺の親父は高校生の頃に死んだ。銃撃が致命傷となって病院で息を引き取った。この日本で銃殺だ、ありえるのか?
母さんが居るのに連絡もせずに朝帰りってこともあったし、俺が風邪で早退したらリビングで寛いでたなんてこともあった。
母さんも何も言わなかったが、ロクな仕事をしていなかったんだろう。

病院からの電話で母さんと俺はすっ飛んできて親父の最期を看取った。心電図の音が規則的に聞こえてくる。
数々の器具に囲まれた親父は、震える手で母さんの頬に触れようとした。母さんは涙ぐみながら親父の手を握り頬に当てた。
最期まで母さんを悲しませるのか。俺は半ば冷ややかな目で見ていたのだが、親父は俺の方を見た。

「見ろ夫」俺の名前だ。
バッカーノ!を見ろ……!」

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「……は?」
『ばっかーの』が何か知らないが、死の間際にあって俺に向ける言葉がそれか? 俺はさらに冷ややかな目で親父を見た。さっき半ばだったから100%だ。
「1711年、新天地を目指す錬金術師たちが悪魔から得た“不死の酒”。それを飲み、不死者となった者たちには、右手で“喰い合う”ことができるという奇妙なオマケがついていた。そして1930年代、その酒を錬金術師のセラードが蘇らせたことにより、ニューヨークの裏社会で生きる人々の運命が複雑に交錯していく…」
それだけ告げて、親父は死んだ。


その後、俺は母さんと一緒に『ばっかーの』について調べてみた。どうやら原作は小説で、アニメ化もされている作品らしい。
親父は見ろ、といったのでアニメのほうを見ようとAmazonプライムに入会して視聴を始めてみた。
飛び込んできたのは軽快なジャズのリズムで流されるアニメーションだった。後で俺はこれをオープニングというのだと知った。
登場人物らしき者の姿と名前が流れていく様に俺は惹かれていった。
(親父が見せたかったのはこれだったのか……?)
俺はそう思いながら見続けた。結果としては、320点(何点中?)だったのだろう。

このアニメは幾つもの時間軸が並行して進められる。初めは登場人物の名前も状況も把握できずに進んでいった。
適度なアクションと不死のインパクトで退屈させずに進んでいく物語。俺はその中で、最も異質な登場人物二人に注目した。

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仮装強盗のカップル、アイザックとミリアだ。1930年代、陰謀と暴力がひしめくニューヨークの中に居て、彼らは異様なほどにポジティブなのだ。
トリックスターと言うべきか、彼らの善意ある言動はハチャメチャながらも物語を好転させていく。
他の登場人物も魅力的だが、簡単に二人紹介する。

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殺人狂、ラッド・ルッソ

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好みのイケメン、ラック・ガンドール
この二人が関わる場面は多いので、名前と顔を覚えておいて損はないだろう。
全てを見た後には全ての物語が繋がってみえる、気持ちのいい構成となっている。
聞けばこれはアニメ独自の構成らしく、制作スタッフの妙を感じる。
これは是非通して視聴すべき作品であり、Amazonプライムではソレが簡単にできる。

 

親父、『バッカーノ!』に会わせてくれてありがとう。
これは他者に是非見せたい作品だ。俺が成長して、結婚したできた子供にもだ。
もしかしたら、俺も遺言に「バッカーノ!を見ろ」と言う時が来るのかもしれない……